寿限無

やぶらこうじのぶらこうじ

FINCAでパイルアップしてもらいました

FINCA新宿店で推し香水を作りました。店頭で説明された注意事項に従い、今回も特定のキャラクター名を出さずに匂わせますのでお察しください。(店員さんに「SNS投稿では、彼の名前を出さず匂わせるくらいでお願いします」って言われて笑ってしまった。匂わせるくらいね!フレグランスだけにね!)

前回のscentlyさんでは「多様なコンテンツから形成された彼」をイメージした結果、ラストシーンを連想させる儚げな香りに。今回は「相手をなんとか手中におさめようとする贔屓の彼」の香りに出会うためにお世話になりました。大事なことなので2回言います、「贔屓の彼」です。

オンライン予約し、インタビューシート持参で入店。感染対策でカウンセリングに30分の時間制限があるため立ったまま始まります。

FINCAさんは自社販売の香水をパイルアップ(重ね付け)する方法で香りを作っていきます。表現したい香りについては「俺のものになれー!と主導権を握りつつも、その後ろに、頑張っている不器用さだったり、臆病な姿がチラチラしてほしいです。」とリクエストしました。ふむふむとインタビューシートを読みながらアキネイターと化すお姉さん。関係ないけどこの記事を書きながらアキネイターをやってみたら、決定打となる質問が「人を殺した?」で声を出して笑った。

「彼は仮面をつけているんですね。お姉さんは彼の顔を見たことがある?」「はい、見てます」「顔はかわいい、かっこいい、クールでいうとどれですか?」「えっ……容姿的なことですよね……醜いです…」「醜い!?!」「この顔のせいで人生なにもかもうまくいかない!と思ってます」この時点でインタビューシートに追記される「闇」の一文字。はやい。

「彼が歌うのは、自分で作った歌ですか?」「(おそらく)そうです」「ライブとかコンサートします?」「しないです!もうほんとに、彼女を自分の虜にするためだけに歌うので、大衆に向けては歌ったりはしないです」「けっこう依存や執着しそうですね」「します!かなりの!!」「彼女への愛は、純粋で明るいものですか?どろどろしてる?」「暗いです。恋愛の愛ではなくて、母親からの愛情を求めてます。暗いけど純粋な気持ちだとは思います!相手を大切にしたいという気持ちはあります!」喋れば喋るほどろくでもない男を必死にフォローしてるようでジワジワきて、そういう意味でかなり楽しかったです。

「彼は喋りますか?」「喋りますが、対面での会話はあまりしないです。手紙で自分の存在を示したりってかんじです。人間関係が得意じゃないです」

あとは地底湖に住んでいることで店員さんを若干困惑させたりしました。一通り質問が終わったら、「ミステリアスで闇がある」「不器用」「(歌声や純粋な気持ちの)きれいさ」を異なるアプローチで表現した3種類の香りの提案。しかし、まったくしっくりこない。ちょっと不安になりはじめる。そこから「この香りでは無いです」「これよりはこっちのほうが近いかもしれないです」と選択肢を消していったり「もうすこし慎重で不器用な要素を入れたいです」などオーダーして、ブラッシュアップしてもらいます。彼のことは私しかわからないので、とにかく好きな(感じたい)要素を伝えよう!!と積極的に言葉にした結果、日常生活の3ヶ月分くらい「不器用」って言いました、たぶん。不器用に頑張ってる姿が好きだなって、実感したところだったので…。

取捨選択をするうちに、一番最初にしっくりきた要素はオヴェルタでした。店員さんが「19世紀フランスの要素を入れてみました」と選んだ香りです。アンティーク調のラウンジで葉巻を咥えながらウイスキーを傾ける男性を連想する香り。フレッシュな若さではない深みのあるメンズ、わかる。あと多分ベースにオークモスがあるからちょっとジメッとするやつ…蝋燭の火がある地下…。

そこから、オヴェルタを主軸にした組み合わせの吟味が始まります。「それっぽい」にあたると表情筋が動く。しかしレポでよく見る「いる!!!」には辿り着けず…ハッキリ目の前に出てきてくれない限りは、自分で決めなきゃいけないわけです。かなり悩みまして、もう、ほんとに悩みまして。悩みすぎてわけがわからなくなりまして。時間制限がなかったら数時間は決められなかったかもしれません。「こっちはすこしクセがある香りの不器用な彼で、こっちはきれいさが強い彼です。今日はどっちの彼を連れて帰りたいかですね。」「一度外に出て、彼の画像を見ながら嗅いでみてください。」とすすめられ、何度目かの店外で「彼」の歌声を思い出しながら公式画像を見つめてムエットを嗅ぐの、とにかく背徳感と罪悪感がすごかった。こんな気持ちで画像を見つめたのは初めてだよ。

そんなこんなで、なんとか決めた最終決定がこちら!

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オヴェルタヌーンムーン

最後までリトルウイングと迷いました。リトルウイングは澄んだ透明感のあるせっけんのような香りで、きれいな高音や愛を求める純粋さが感じられて。ヌーンムーンは瓜のような?クセがある軽い香り。なによりミドルノートに入ってるんですよね、ミュゲが…scentlyさんの解釈で殴られた聖母マリアの花…。きれいな透明感も捨てがたいけど!!「彼」なら選ぶべきはクセだろう、どっちかといえば!!!ミュゲだし!!!ということでヌーンムーンになりました。店頭では時間的にトップノートしか嗅げないからミュゲを感じられるかわからないのにね。花言葉大好きオタクは彼っぽい花を知っておくと思わぬ決め手になるかもしれません。(苦渋の決断だったためリトルウイングの組み合わせでもムエットをもらって帰りました。捨てがたいと思ったらオンラインで購入できるのも助かる。)

ピンときたわけじゃないけど、肌にのせたら香りも変わるだろうしな…と期待しながら、その晩に腕でパイルアップ。トップノートは店頭そのまま。そして1〜2時間後、香りが変わったので腕を嗅いでみたら。

…えっ!?!あっ!!!?わかる、かもしれない!!?!メンズ感の上に、トップノートにはなかった少しの重みがありながら胸焼けせず心地よく嗅いでいられるバニラビーンズの甘さが…わ、わかる〜!!!!贔屓の彼があの場面で見せる優しさの甘み〜!!これがもっとダイレクトな色気に寄ってたら獲物を待ってる彼なんですけど!そうじゃないからこそあの場面の彼なの、わかる。クセのあとに甘さがくるのも。それに自分用の香水では絶対に選ばない香りだからさらにドキドキする…というか、この香りが30分も贔屓の彼のことだけを考えて選んだ香水という事実だけでもやばくない…???ウワーッッ その晩は香りを拭わずに寝たんですけど、夜中に目が覚めるたびにぼんやりした思考回路に甘さが流れてきて、やけに恥ずかしくなりました。いつもそばにいてくれるじゃん…。

そしてパイルアップのすごいところ。逆の順番(ヌーンムーン→オヴェルタ)でつけると、オヴェルタのトップノート(シナモンやクローブ)のスパイシーさで引きしまる&甘さ控えめになります。かっこよさが強くなって、なんというか、これはこれですっごく「彼」なんですよ…!!!なんならこっちのほうがピンとくるぐらいの……贔屓の彼ではないけど、手紙をよこす時の堂々とした口調の彼……バニラの香りも優しさではなく甘言で手まねきをするように感じられて………三点リーダしか打てない………………香水ってすご………。

というわけで、FINCAさんのパイルアップは、推し香水を探す楽しみだけでなく、香水そのものをさらに楽しめるようになる体験でした!気分転換したいときは手持ち香水でもしてみたいね

 

余談。香水瓶はキャップではなくストッパー型です。リングがついているのでキーチェーンがつけられます。彼の公式グッズがちょうどぴったりサイズなので飾るのに便利です。

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