体力が無さすぎる。運動音痴で体育は嫌いだったし、あれだけ話題になったリングフィットすら続かなかった。舞浜やイベントで一日歩くことはあれど、健康診断の問診票では「運動習慣 無し」のままだ。就職してからずっと。そして歳を重ねるごとに、数字にはあらわれない変化も感じている。これからさらなる右肩下がりは確定しているのに、いいのだろうか、このままで。
と、数年単位でぼんやりとした焦りを抱えたまま(抱えているだけの状態で)、今年の春を迎えた。春の心地よさは新しいことを始めたい気持ちにさせる。まっさらなノートの1ページ目を開く新学期よろしく、よしやるぞという気持ちだ。その勢いで、マシンピラティスに通い始めた。やるなら今しかないと思った。ちなみに私が丁寧な文字で板書をできるのは、ノートの4ページ目までである。
ジムではなくマシンピラティスに決めたのは、運動が苦手でも大丈夫という口コミがあったからだ。もともとは傷病兵のリハビリのために発明されたもので、マシンの補助機能により少ない負荷でトレーニングができるらしい。それにダイエット(減量)よりも体のラインを整えることに適しているとのこと。減量や、がっつりボディメイクをしたいわけではない。すこしだけ健康寿命が延命できればいい。そんな私にはぴったりな気がした。
それに、「らしくない」ことをしてみたかったのだ。マシンピラティスのイメージといえば、身体のラインがわかるタイトな服装。うーん、キャラじゃない。「いやいやわたしはそういうのはちょっと・・・」と苦笑いしてしまう。だけど、なんというか、だからこそ、やってみたいと思った。マシンピラティスを、というよりは、他人からの評価を気にせず、自由に、らしくないことを選択してみたかった。
わたしは慣れないことをするとき、インターネットにかじりついて情報を仕入れる性格だ。googleからSNSまで、検索欄は「マシンピラティス 初心者 おすすめ」で埋まった。結果的に、徒歩圏内にあるスタジオの体験予約をいれた。「ええい、ままよ!」、タンスからジャージを引っ張り出して、60分間の体験にくりだした。
60分間も身体を動かしたのは何年ぶりだろう。当然へろへろになった。へろへろにはなったが、60分をやりきった。「楽しい!」。運動後のドーパミンを感じるのも久しぶりだ。ドーパミンの気持ちよさのなかで、即日入会した。疑り深い性格でもあるので、「支払金額は、月額会費のほかに施設管理費がかかったりするんですよね・・・?」と質問をしたら「うちはシンプルに月額会費だけですよ。」と笑顔で答えてくれた。帰り道にGUでジョガーパンツを買った。好きな劇団の公演Tシャツとジョガーパンツの組み合わせが鉄板になった。
まずはキャンペーンの解約違約金がかからなくなるまで6ヶ月。6ヶ月は通おうと決めて、なんと、まだ、継続できている。この私が!運動系の会員を!幽霊会員にならずに!通わないとお金がもったいないとは言え、さぼることもできるのにさぼらずに!
あいからわずへろへろになるし、常連向けのレッスンでは醜態をさらしている自覚もあるが、身体を動かすことの気持ちよさ。仕事でモヤモヤしていも、この60分間は自分の身体だけに意識を向けて、自分の身体を動かすのってこんなに難しいんだと感じる時間。身体がじんわり温まってきてすこしだけ汗をかく瞬間。これってもしかしてマインドフルネスではないのか。精神面にポジティブな影響が出ている気がする。
肉体面にも変化があった。頭痛がするほどの肩こりで1ヶ月に1度は整体に行かないとしんどかったが、今では「しんどいからとりあえずピラティスいくか」に変わった。肩こりがない状態でピラティスをして、左右の不均等に気づいて整体にいくこともある。それから、通い始めて半年が経った頃、体重がするすると落ちた。下半身の肉付きもかわったと思う。献血ができない体重まで落ちたので、危機感を抱いて、体重計を体重体組成計に買い換えた。骨格筋率が下がっていないことを確認してホッとしている。
解約違約金がかからなくなっても通い続けようと決めた記念に、ヨガウェアを買った。トップスは腰回りが隠れるくらいの丈長めだが、ボトムスは身体のラインがわかるタイトなウェアだ。下半身に重点を置くレッスンだと膝上がぽっこり動くのもよくわかる。「らしくない」ことを始めて、ここまできた。もしかしたら、半年後にはヘソ出しウェアになっているかもしれない。と、自分で書いてみて「いやいやさすがにそれはないか」と笑いながら、いつかの未来にヘソ出しウェアの私が待っていてくれたら、会うのが楽しみだとも思うのだ。


